ここで少し具体的な文章の基礎を学んでいきたいと思います。とくに自分史を中心に解説します。
けっして学校の国語の授業などではなく、やさしく、わかりやすい文章を書くための手引書です。
少し前までは「自分史は程度が低い」「家族くらいしか読まれない」と、自分史に対する偏見があったのも事実です。しかし、自分史・自費出版を手がける大手出版社(講談社、朝日新聞社、丸善、文芸春秋社など)の歴史は意外と古い。
わたしの勤める東銀座出版社は創立1989年のスタート時から、自分史・自費出版を重視してきました。理由のひとつは、誰にでもその人にしか体験していない貴重な歴史があり、プロ、アマを問わず記録に残すべきだと考えたからです。
もうひとつは、子どもの詩や絵には驚くほど感性豊かな作品があります。これと同じく普通の人にも、けしてプロには書けない、比べられない体験や思い出があり、長く後世に伝えるべきものが少なくないと思ったからです。
書き方に特別な約束、法則があるわけではありません。
一番、自分の書きたいこと、主張、伝えたいことを書けばいいのですが、普通の人は特別に訓練を受けたわけではないので、簡単にはいきません。次に挙げる方法は、いくつかの参考と思ってください。
①年代順、時系列に沿って書く。そのためには出生、入学、卒業、入社や転勤、結婚、子どもの誕生など人生の節目を区切り、年表を作っておくことです。
②人生の中でもっとも印象的な、感動的な、珍しい体験を思いつくまま書く。ひとつひとつの文章はつながらなくてもよいので、詳しく書くように努力します。
③思い出すまま目次を立ててみる。母の思い出、親友のこと、自分の失敗、恋人との出会い、仕事の悩みなど。できるだけ多く立て、その中の書きやすい順番に書いてみる。並べ替えは最後でよいのです。
④テープレコーダー、カセットテープ、CDなどを用意し、人生のもっとも印象的な出来事を吹き込む。ひとりで語るのが難しい人は、誰かに同席してもらい、質問や相づちをしてもらいながら吹き込むと効果的です。対象となる人から話を聞き、テープに起こすことも本の内容を豊かにします。大げさにいえば取材です。
⑤貴重な写真、学校の文集、会社の資料、手紙など手元にある物を整理し、このひとつひとつについて書き進めます。当時の資料を見ることによって、過ごした時代のことが鮮明になってきます。この延長として図書館、役場、公民館、寺や観光協会、同窓会、戦友会、同好会などにある資料を集めることも役立ちます。
⑥原稿用紙およびパソコン入力などに書き、記録する。メモ用紙だと字数、句読点などがわかりにくくなります。
この他、自分で一番書きやすい方法を組み合わせてみてください。