オリンピックで2回も金メダルを獲った内柴正人氏が、教え子の選手を暴行したとして逮捕されました。本人は「合意」と弁明していますが、未成年に飲酒させ、「合意」とはいっても合宿先ですから勤務中ともいえます。法律的とは別にしても、柔道家としてモラルに反したことは恥かしいことです。
柔道の創始者・嘉納治五郎師範は「精力善用」「自他共栄」として、力を善いことに活用する、相手を思いやる精神を強調しました。勝ってもけしておごらず、相手にも敬意を表することを教えました。強い者こそ弱者を思いやる、この精神からしても内柴氏の行為は残念です。
創立間もない女子柔道部・環太平洋大学を優勝に導いた、オリンピック金メダリストの古賀稔彦氏が見本のように活躍しています。柔道家は昔から指導だけではなかなか生計が難しく、プロレスや格闘家になって稼ぐしかなかったのですが、古賀選手が町道場をおこし、大学の監督として新しい道を拓いてくれたのに。
かつて、日本選手権、世界選手権を制したS選手が恐喝罪で逮捕されたときのショックは残念の想いを通り越しました。高校時代から「組んだら秒殺」といわれたS選手に対戦でき、場外で投げたものの負けた経験はわたしの誇りでした。その選手の不祥事が、今度の内柴氏と重なります。
過去の成績が抹消される無念さはもとより、人生を棒にふる失態をみるとき、「人生は死ぬまでわからない」ことと、「頂点を極めたからこそ自他共栄の精神を忘れてはならない」ということを思うのです。
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