1月5日、作曲家の林光氏が亡くなりました。交響曲をはじめ、こんにゃく座とのオペラ、社会運動をたたえた歌など幅広い活躍で知られていました。
氏との思い出が二つあります。
今から30年以上、前のこと。渋谷の喫茶店で代表作の歌「たたかいの中に」について取材したとき。
「作詞の紙が高橋正夫のポケットにはいっていたと聞きましたが」と、わたし。
「どこからそんな噂が広がったのかね。彼の机にあったのが事実だよ」
高橋正夫は、「血のメーデー」といわれた1952年の当日に、皇居前広場で警察官によって射殺されたのでした。たくさんの無実の人が逮捕された事件。
♭ たたかいの中に 嵐の中に 若者の心は美しくなっていく
当時、戦闘的な歌詞の中にも青年特有の情緒が漂い、林氏のメロディックな曲と合って大ヒットしました。
林氏は芸大当時から、うたごえ運動の創始者・関鑑子のもとに通い、外山雄三、いずみたく氏とも交友がありましたが、一時、考えの違いから遠ざかっていたのでした。渋谷での取材時、わたしは単刀直入に「ささいな違いだと思います。もう一度、一緒にやったらどうでしょう」と提案、実現したのでした。
もう一つは原稿を依頼したとき。たしか、アメリカの民衆音楽についての内容だったと思います。
ところが、わたしは大きなミスを犯してしまいました。林氏からきた原稿に「合州国」とあったのを「合衆国」と、本人に確認せず直してしまったのです。著者はこの違いを承知で使いわけていたのです。「アメリカに民衆の声は反映されていない」との考えでした。
編集者として今でも反省させられる経験でした。
氏は音楽の先生にピアノを教えるほどの実力でしたが、たくさんの本を出していて文章もプロ並だったのです。
♭ 明日は必ず 僕ら若者に 勝利の歌がうたえるように 行こう みんな行こう
まだコメントはありません。