「おい、みんな聞け! 俺はお前達を殴る時、教育的指導なんかという気持ちではない。怒りがおさまらないから殴るんだ」
壇上から叫んだのは当時の高校校長だった。
喫煙が発覚し全校生徒を集め、その前で違反生徒を殴った校長だったが、今の時代では考えられない指導で、まさに暴力だ。しかし、わたしは当時、妙に「本音をぶつけて人間らしい先生」と錯覚してしまった。
国内のトップクラス女子柔道選手15人が、JOC(日本オリンピック委員会)に園田隆二監督らを告発した事件は、世界のスポーツ界へも波及し、日本柔道連盟は上村会長をパリの世界柔連まで釈明派遣するまでになった。
最初の告発が1人で昨年の9月、事件が発覚したのが2013年1月29日、実に5か月近い時間が過ぎ、ようやく監督とコーチ、そして強化委員長の辞任があり、第三者委員会の設置がようよう決まった。解決の道筋は始まったばかり。
この間、わたしも取材したことのある山口香氏はどう考えているのか? なかなか表だってこなかったが、やはり15人の選手に当初から相談を受けていたことがわかった。
「全柔連は男女の差が歴然」「昇段にだって女子は差別されている」と公言して止まない山口氏は、橋本聖子氏らとオリンピックに参加した女子会をつくってスポーツ界の発言権を強めていた。
「むやみに落とすのは止めてもらいたい」
わたしたち柔道部の高校一年生は、当時の監督に抗議文を出した。
名門大学でレギュラー、千葉県国体選手権に連続出場の監督は強かった。立ち技で投げられた記憶はないが、寝技では一年の夏ころまでかなわなかった。とくに絞め技で落とされると苦しく、「見せしめ」のようにされた。そして、集団で抗議したのだった。
柔道は一対一の格闘技独特のスポーツだから、一寸の差で暴力にもなりえる。嘉納治五郎師範が柔術を柔道に昇華したのも、「自他共栄」とうたったのもなぜだったか? フランスの柔道人口は日本の3倍近い。かの国では「教育としてのしつけ」が親から信頼あり、悪がきも入門させられ人間形成に評価が高い。
まだスタートしたばかりの日本柔道改革だが、そのためにもトップが責任をとり交代すべきだろう。
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