「おう、みんな元気だったか」
50年ぶりに会った郡司君は秋なのに派手なアロハシャツを着ていた。やくざ風な格好で小学校のクラス会に初めて出てきた彼は、遠い昔の面影がまったくなかった。
わたしの成績は下から数えた方が早いほど悪かったが、彼はさらに低かった。相撲もドッチボールも相手にされなかった。
戦後、間もない生活は、給食のコッペパンと脱脂粉乳のミルクだけが唯一の楽しみだった。グローブを持っていないのは数人だったが、その中にわたしと彼がいた。
わたしは運動神経の良さで少しみんなから一目おかれていた。しかし、郡司君は「洟垂れ」と呼ばれ、「いじめ」にあっていた。
「郡司を泣かせたのは誰だ、許さないぞ」
貧しい彼にどうしてか同情して、いつもかばってやった。彼はどんな時も黒い大きな学生服を着ていた。その服で洟を拭くから袖がピッカピカに光っていた。
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