2011年刊 46判・並製 540ページ 定価:本体2381円+税
アララギ派短歌結社「行路詩社」の青春群像
大正時代の東京・下町。夭逝した労働者歌人・松倉米吉とその仲間たちの足跡を、島木赤彦、斉藤茂吉、古泉千樫らの動向とも関連させながら、綿密な資料調査によって記録した。
後年、短歌結社の主宰者・指導者となっていった早川幾忠(『高嶺』)、高田浪吉(『川波』)、相坂一郎(『青垣』)、広野三郎(『久木』)、中村美穂(『みづがき』)らの熱き青春。
★「短歌」(8月号)、「短歌新聞」(7月号)で紹介されました。
【角川文芸出版「短歌」2011年8月号より】
松倉米吉はアララギの夭逝歌人で窮乏のなかで生を終えた。米吉の遺歌集の刊行等で米吉を支えた行路詩社が、「本所という肉体労働者中心の地を生活の本拠」とする三人の職工の回覧雑誌から始まることに注目した作者は、青春期を本所で過ごした体験を彼らに重ね、丹念に行路詩社の足跡を辿り、記録していく。松倉米吉の歌集未収録歌から、早川幾忠、高田浪吉、相坂一郎、中村美穂ら行路詩社の仲間達の交友の軌跡はエリート集団とは別のアララギの青春を浮き彫りにして読み応えがあった。
【「短歌新聞」2011年7月号社説より】
アララギ関連の本
…これは徹底的に資料を博捜して検討、著者の主観をほとんど交えず資料をもって自ずから語らしめるといった趣の筆法で書かれた本。しかし、それが決して無味乾燥に陥らないのは、中学卒業後工員として働きながら夜間高校を経て大学を卒業した著者の経歴によるところも大きいだろう。
こうした著書が、歌壇に属さない研究者から出てくることの意味を、われわれはよく考えてみる必要がある。